庭
昔住んでた家にはいろいろな草木が植わっていた。
庭造りが好きだった祖父が年月をかけて作り上げた庭で、いつもきれいに手入れされていた。
ただ、祖父の死後、自営業の父は仕事で、母は子育てで毎日手いっぱいだったため、
誰も世話をする人がいなくなり、だんだんと荒れていってしまった。
やがて、玄関横のハスの水盆とツツジは取り払われ駐輪場になった。
軒の横まで無造作に伸びた花梨の幹は、強風が吹くと軒にぶつかり、その鈍い音が子どもながらにすごく怖かった記憶がある。
その後、父が亡くなり、相当な借金があったため土地を手放さなければならなくなった。
庭には、大きなメタセコイアの木もあったのだが、土地を引き渡し後、解体作業中の現場の横をたまたま通った時、そのメタセコイアの木がちょうど抜根作業の途中だった。
なにしろ大きな木なので、根の張り方もすさまじい、大地から引きはがされまいと必死に抗っているようだった。
それを見て、なぜだか「がんばれ」と応援したくなる心持ちになった。